映画『ジェイソン・ボーン』のレビュー&感想&あらすじ

映画 ジェイソン・ボーン

まさかシリーズが再開するとは!

まずは『ボーン』シリーズの確認。

『ボーン・アイデンティティー』(2002年)
監督:ダグ・リーマン
脚本:トニー・ギルロイ、ウィリアム・ブレイク・ヘロン
『ボーン・スプレマシー』(2004年)
監督:ポール・グリーングラス
脚本:トニー・ギルロイ、ブライアン・ヘルゲランド
『ボーン・アルティメイタム』(2007年)
監督:ポール・グリーングラス
脚本:トニー・ギルロイ、スコット・Z・バーンズ、ジョージ・ノルフィ
『ボーン・レガシー』(2012年)
監督:トニー・ギルロイ
脚本:トニー・ギルロイ、ダン・ギルロイ
『ジェイソン・ボーン』(2016年)
監督:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス、クリストファー・ラウズ

原作はロバート・ラドラム著の小説『ボーン・アイデンティティ』三部作ですが、主人公の設定は大きく異なっています。

『ボーン・アルティメイタム』で一度完結しているのですが、その後、外伝として『ボーン・レガシー』が、オリジナルの続編として『ジェイソン・ボーン』が公開されました。

また、『ジェイソン・ボーン』では「新章の始まり」とされているので、ヒットすれば続く可能性は高いですねぇ。

 

脚本にうなる良シリーズ!

とりあえず、『ボーン』シリーズの何が良いって、単体で見てもつっこみどころが少ない脚本の素晴らしさ。

大体、シリーズ物の映画って前作を見ていないと設定や登場人物においてひっかかる部分や矛盾があります。

「は?なんでこんなことできるん?」

「何その決めポーズ?」

「こいつ誰やねん!」

的な。

『ボーン』シリーズにはそれが(0とは言わんが)ほとんどないので、いきなり『ボーン・アルティメイタム』を見たって満足できる。

当然、「記憶喪失」「消せない過去に対する自責の念」「見えない将来」に苦悶する、強すぎる元CIA工作員という大きな背骨があり、作品が進むに連れて程よいネタバレ展開があるので、ちゃんとシリーズとしての意味があるし、主人公は寡黙で、雰囲気重視の演技が多いから、のめり込みやすいってのも良い。

監督、脚本のトニー・ギルロイ、ポール・グリーングラスが良い仕事してるわ。

 

ハイテクスパイグッズに頼らないからこそのご都合主義

そもそもスパイ映画ではないことにご注意を。勘違いしている人結構いるよね。

組織のお偉いさんに嵌められた工作員(暗殺がメイン)という設定なので、雰囲気は『007』や『ミッションインポッシブル』に近いけど、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントと違ってジェイソン・ボーンはほとんど喋らないし、言うなればスマートなランボーなのさ。

そして、シリーズ通して気になるところが少しある。

『007』や『ミッションインポッシブル』は、主人公があり得ないほど強いのは当然として、ストーリーを補う、いや、それなくしては語れないハイテクスパイグッズが多数登場します。『007』ならボンドカー、『ミッションインポッシブル』では変装マスク、等々。

ところが、『ボーン』シリーズにはそれがない。ただただ能力が高いという一点突破。特に記憶をなくしてからは人を殺すことに抵抗を感じているので、銃の使用は少なく、格闘メイン(もちろん銃撃や爆発もありますよ)。例えるならそう、ネガティブなセガール。基本的には強いし手際も良いんだけど敵もかなり強いので、必死感があるし、それを強調するようなカメラワークも見どころ。

それゆえ、若干ご都合主義な部分が目立つ。「なぜそれがそこに?」「そんな上手くいく?」的な。でも個人的にはそれも含めて、テンポが良く、展開が明快で、各シーンのバランスが良いと思う。印象的なシーンは?と聞かれると、ド派手なアクションより、セリフが思い浮かぶくらい。

子供は派手なアクションシーンを好むでしょうが、原作が小説なだけあって、大人もきちんと楽しめる、深い作品なのです。

 

最重要事項「トレッドストーン計画」

ネタバレと言うほどではないので、とりあえず見る前に抑えておきたい重要事項です。シリーズ通して登場人物が多いので、ここで置いていかれるとストーリーが楽しめないと思われます。

  • CIAによる工作員(暗殺要員)育成計画で、ジェイソン・ボーン(本名:デイヴィッド・ウェッブ)はその第1号。
  • CIAの長官:ロバート・デューイ(トミー・リー・ジョーンズ)
  • 計画の責任者:CIAのウォード・アボット(ブライアン・コックス)
  • 研究施設:アメリカ・ニューヨーク
  • 研究施設の責任者:アルバート・ハーシュ(アルバート・フィニー)
  • 訓練監督官:ニール・ダニエルズ(コリン・スティントン)
  • 実働作戦の責任者:デッド・コンクリン(クリス・クーパー)
  • 支援要員:ニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)

 

ことの発端は?なぜ記憶喪失に?【※最新作までのネタバレあり】

正直、トレッドストーン計画自体はお国のため、と考えればそこまでおかしなことではなかったんです。(ランボー的なアレ)

何がダメって、CIA長官、ロバート・デューイや、計画の責任者、ウォード・アボットが悪いヤツだったってこと。(ランボー的なアレ)

トレッドストーン計画の第1号であるデイヴィッドの、その最初の任務くらいお国のための純粋(?)な作戦にすれば良かったのですが、初っ端から私利私欲のためだったんです。救いようのないやつ。(ラ…)

しかも、最新作で明らかになりましたが、当初、テロリストに父親を殺されたデイヴィッドが自らトレッドストーン計画に志願したとされていたのが、実は「仕組まれて」いたことだったんですね。

トレッドストーン計画の設立に関わっていたデイヴィッドの父リチャード・ウェッブが「こんな計画はあかん!デイヴィッドに関わらせてたまるか!」と世間に計画のことを暴露しようとして殺され、それを利用してデイヴィッドを計画の第1号に仕立て上げたと。ほんと悪いヤツ。

当然、そんなこととはつゆ知らず工作員として日々任務をこなしていたのですが、アフリカ某国の元独裁者の暗殺作戦に参加した際、ターゲットに子供らが!洗脳されてなお優しさが隠しきれないデイヴィッド。暗殺を躊躇して失敗、負傷して海へ逃げ、それが原因で記憶喪失に陥りました。

完全にデイヴィッドは被害者

 

『ジェイソン・ボーン』の感想【※最新作までのネタバレあり】

出典:YouTube

最新作『ジェイソン・ボーン』はかなり楽しみにしていました。『ボーン・アルティメイタム』で一応完結していたので、これ以上デイヴィッドにとって何か良いことが起こるのか、と。

結論から言うと、ストーリーはオリジナルですが、デイヴィッド・ウェッブ(ジェイソン・ボーン)本人に関しては違和感のない(なさすぎる?)、「掘り下げパターン」でした。

正直、名前を借りただけの「ありえない設定追加パターン」か?と心配していた分、そうではなかったので印象は良かったのですが、掘り下げた量が前3作に比べると少なすぎたかな。

掘り下げた内容ではこれだけの大事件を起こす原因としてライトで、どちらかというとCIAの新計画の方がヘヴィー、つまり、ジェイソン・ボーンが登場する必然性が低く、巻き込まれた感の方が強い印象になっていました。

全世界を監視されても、デイヴィッドレベルなら何の支障もないですし、デイヴィッドがどれくらいの熱量で新計画を阻止しようとしていたのかが分かりづらかったかも。

結果、CIA絡みのド派手なアクションに偏ってしまったのでしょう。自分探しに奔走する、コンパクトでスピーディでパワフルなデイヴィッドはどこへやら。

まあ、見方を変えれば、今までの作品では、ひっそり行動することがほとんどだったので、デイヴィッドの車やバイク関連の技術、アクションが見られて良かったとも思う。

これで次回作があったとして、CIA長官が死んでしまったわけですから、残るは国家安全保障会議(NSC)、か大統領。ということで、選択肢が狭まってまいりました。まさかとは思うけど、ヘザーと協力して海外で起こった事件を解決しよー!みたいな流れにだけはしないで欲しいと切に願う。

ちなみに、「取り戻した記憶すべてが覆された時、新たな戦いが始まる」というキャッチコピーはデタラメです。言いたかないけど配給会社のセンス0です。ネットの釣りタイトル以下。シリーズ全部見たのかって聞きたくなる。ふんっ。

ということで、結論!「アリシア・ヴィキャンデルを愛でる作品」★★★★☆

 

『ジェイソン・ボーン』のあらすじ【※最新作までのネタバレあり】

『ボーン・アルティメイタム』の公開から9年経っているので、初っ端からマット・デイモンの放つ疲れている感と45歳とは思えない相変わらずの肉体にジーンときましたね。そりゃデイヴィッドも老けますし、生きていくのに疲れていますよ。

ストリートファイトの賭け試合でひっそりと生計を立てているデイヴィッド。身を隠し続けるのも大変だよね。

そこに突然現れる、CIAの同僚だったニッキー・パーソンズ。以前助けてくれた良い人です。

ニッキーはアイスランドのハッカー集団と共にCIAをハッキングし、極秘資料から世界中を監視・操作するための極秘プログラムを立ち上げたことと、デイヴィッドの過去に関係する情報を得ていましたが、その際CIAに探知され、追われる身に。

ここで、故ウォード・アボットよりも上、というかCIAのトップ、長官のロバート・デューイがシリーズ初登場。

その俳優がなんとトミー・リー・ジョーンズ。雰囲気最高。(コーヒーのCMが脳裏をよぎったのは内緒)。

そして、再び動き始めたデイヴィッドの追跡を任されたのは、CIAのアナリスト、ヘザー・リー。本心かどうかはこの時点では不明ですが、ロバートの言動に疑問を持ちつつ、デイヴィッドは利用価値があると言ってCIAに戻そうとします。デイヴィッドのこともちょっとだけ助ける等、仲間になりそうな雰囲気は醸し出していましたね。

俳優はアリシア・ヴィキャンデルって超美人。『エクスマキナ』のキツ可愛い印象が強かったのですが、思い返せば『戦場からのラブレター』で号泣させてもらったわ。(関係ないけど、岡田結実に似てるよね?)

ギリシャで再開したデイヴィッドとニッキーは、早々にCIAに狙われ、逃走スタート。激しくスピーディなバイクアクション、の末にニッキーが暗殺者によって射殺されてしまいます。殺されてほしくはなかったけど、薄々勘付いちゃうよね。なんとなくM:I:Ⅲのリンジーを思い出しちゃった。

(真剣なシーンなのにちょっと笑っちゃったのが、CIA側のセリフでは「パーソンズ」ってラストネームを使ってるんだけど、字幕では「ニッキー」になっててさ。友達じゃないんだからファーストネーム連呼しないでしょ、普通。「花子はそっちに行ったぞ!」「花子を追え!」ってか?)

暗殺者役はヴァンサン・カッセル。ドーベルマン、オーシャンズ12、13とはまた違う、ワルい表情がたまりません。

デイヴィッドはニッキーから受け取ったロッカーの鍵から手帳とメモリを手に入れ、ニッキーの活動していたハッカー集団のボスに会いに行くのですが、メモリを復元しようとすると、ウィルスによって閲覧中に中身が削除されてしまい、居場所を探知されてしまいます。

デイヴィッドはかろうじて閲覧できた資料から父の同僚の居場所を知り、追い詰めたその同僚から、そもそも父は分析医ではなくCIA関係者でトレッドストーン計画に関わっており、息子であるデイヴィッドを計画から遠ざけようとして殺されたということと、その黒幕がロバートであるという真相を突き止めます。

そして決着をつけるために向かったのが、デイヴィッドには似合わないラスベガス。そりゃCIA長官がいるのはアメリカってなっちゃうのはしょうがないけど、もうちょっと暗めのゴチャゴチャした街が良かったな。

ラスベガスではプライバシーやセキュリティに関するエキスポが開かれていて、シンポジウムにロバートが出席することになっている、と。

一方で、世界中を監視・操作するための計画を進めていたロバート。この計画はCIAに借りがあるソーシャル・メディア「ディープ・ドリーム」ありきだったのですが、そのCEOがCIAを裏切ったので、暗殺対象に。

会場に乗り込んだデイヴィッドは、ロバートに不信感を抱くヘザーと表面上協力し、CEOの暗殺を阻止、逆にロバートを追いつめて、最終的にはヘザーがロバートを射殺。デイヴィッドは自ら罪を被って逃げ、因縁の暗殺者とも死闘の末に決着をつける。

ラストにヘザーとの絡みがあるのですが、デイヴィッドの真骨頂、「いつでも見てるぜ」アピールに痺れてエンド。

結局、複雑な真実を知って、更に苦悩する日々を送ることになったデイヴィッドでした。

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ハッチ

生まれてから浜松市と静岡市を行ったり来たりの静岡人。前世はナマケモノ。口癖は「働きたくない」。 大学→ニート→留学→公務員→IT企業ときて、現在はフリーランスという名のスローライフを満喫中。 夢は島を買って小さな水族館を作り、ラーメン作りに精を出しつつ、星空の下でティンパニを叩きながら死ぬこと。