「私のアイドル好きの原点は、ゴマキです」
本書で著者はこう言っている。偶然にも、私のアイドル好きの原点も、ゴマキだ。彼女の発言は、ドルヲタをワクワクさせることが多く、私たちに親近感を沸かせてくれるときがある。
しかし、「1人でも多くスターを育てたい」という一文を見た瞬間、“あ、この子はアイドルだった、HKT48の支配人だった”と、一気に現実に引き戻されるのである。
彼女の名前は、指原莉乃。HKT48に所属しているアイドル
しかし、彼女の方向性は、原点のゴマキとは似ても似つかない。
指原莉乃は、後藤真希と真逆と言っても過言ではない。なぜなら、2013年に行われたAKB48の総選挙で1位を獲得したとき、彼女はステージからの景色を見て「20歳のかわいくもない女の子のことで7万人が揺れている」と思ったのだから。ゴマキは絶対にこんなこと思わない。
彼女はあるスキャンダルがきっかけでHKT48に移籍した。彼女はこのとき、AKB48を辞めようと思ったそうだ。しかし、元モーニング娘。のえりりんこと亀井絵里のことが頭によぎったと言う。
「亀井ちゃんは体調の問題でしょうがなく卒業したんですよ。私は、たったひとつの記事なんです。それで卒業、引退なんて、絶対よくない」
私はこの彼女の言葉をイマイチ上手く理解できないが、えりりんのおかげで今の指原莉乃がいるということなのであろう。
昨今、アイドルにはトーク力がとてつもなく求められている。彼女は、かなり早い段階から、自分が輝ける近道はMCを頑張ることだ。と確信したそうだ。
私は、MCには2パターンあると思っている。話をあらかじめきっちり決めて、何度も脳内でシュミレーションしてから話すもの。そして、ある程度の大枠だけを決めて、その場の雰囲気を察して臨機応変に話すもの。彼女は、後者だ。
「台本組み立ててかっちりしゃべるのは良くないと思う。ファンの人のウケを確かめながら、失敗を怖がらずにしゃべったほうがいい」
彼女はこうあっさりと言っているが、これは、簡単なことではない。
指原莉乃にとってコンサートは特別な場所
彼女のアイドル活動は、ドルヲタ時代からはじまっていたのであろう。
彼女はアイドル愛なら誰にも負けないと言っており、この愛は小学校5年生のとき、初めてモーニング娘。のコンサートを見たときに完成されたと言っている。アイドルになった今も、コンサートのグッズ売り場に並んでいる小さい女の子とお母さんを見ると懐かしい気持ちになるそうだ。
今は化石化しているブログもそうだ。彼女が文章を書くのを好きになったのも、モーニング娘。のファンの人が書いてるブログやテキストがきっかけだそうだ。秋元先生やタモリさんと緊張せずに話せるのも、「おじさんとしゃべるのが得意なのはたぶん、昔からハロプロファンのおじさん達と、コンサート会場でよくしゃべっていたからだと思います」とのこと。
彼女は、ドルヲタ時代の経験があったからこそ、ここまで登り詰めることができたのだ。彼女は今も、観客だったころの自分を忘れていない。
「アイドルが好きで、アイドルの音楽とダンスが好きで……という気持ちは、今でもまったく変わっていません。「好き」の気持ちが今も、アイドルしての活動を続ける原動力になっています
逆転力云々の前にポジティブすぎる
本のタイトルにある“逆転力”について、そろそろ触れたい。
しかし、逆転力云々の前に彼女はとにかくポジティブだ。彼女がどのくらいポジティブなのかというと、HKT48移籍発表の次の日には、気持ちを切り替えられていたくらい。「博多はおいしいものがいっぱいあるぞ」と次の日には思えるくらい。
この気持ちの切り替えを、「反省していないのではない。元気になるのがすごく早い。ラッキーを見つけるのが得意なんです」と彼女は言う。
「どんなに深夜で道が空いてても、車が1台も視界に入ってないとしても、赤信号は絶対に渡らない。チカチカしている信号を、走って渡るのもイヤです。常識はかなりあるほうだと思います。恋愛禁止のルールは破っちゃったんですけど……」
こんな真面目な彼女が、なぜ恋愛禁止のルールを破ってしまったのだろうか、と考えたとき、おそらくこれはなるべくしてなったことなのだと私は思った。HKT48の発展のためにも、彼女のスキャンダルは必要だったのだ。
他グループとの差別化は、HKT48には必須だった。差別化するために彼女が支配人としてさまざまなことを行っていた。ドルヲタの経験を活かした彼女の作戦にドルヲタがハマらないわけがないのだ。
指原莉乃は超酔えるタイプ
お酒の話ではない。
彼女が笑っていいともの忘年会でベロベロに酔っぱらい、千原ジュニアに「お金をください!」と集った話をしているのではない。指原莉乃は、自分に酔いしれるタイプなのだ。
「外見とか人間性には自信はないけど、自分の人生には超自信がある」
彼女は酔っているのだ。自分に酔っているのだ。
褒め言葉しか聞かず、ライバルはおらず、同い年は苦手と言い、目標を決めない彼女は自分に酔っているのだ。こんな幸せなことあるだろうか。自分がこの状況だったら、酔えるだろうか。私は多分酔えないだろう。
でも、彼女は自分の人生は最高だと思っているのだ。やっぱり、彼女は酔っている。最高に酔っている。素敵だ。
ミキティが自分に手を振ってくれていたことに気づく
ドルヲタ時代、大分で行われたモーニング娘。のコンサートに彼女が行ったときの話だ。
ミキティこと藤本美貴が、2階席にいた自分のことをピンポイントで見てくれたそうだ。そして、彼女が手を振った瞬間、ミキティが手を振り返してくれたと言う。
ドルヲタならわかるであろう、こんな話を他人にしても「はいはい」とあしらわれるだけということを。彼女も同じく「思い込みだろ」と友人に言われたそうだ。
しかし、彼女はHKT48のコンサートで、モーニング娘。も立ったグランシアタのステージに立ったとき、あのとき自分が座っていた2階席を見て気づくのである。
「私が座っていた席の人が手を振ったら、はっきり見える。やっぱりミキティは私だけに手を振っていた!」
私はこの一文に彼女の大逆転を感じた。
いじめられて不登校になった彼女は、モーニング娘。も立ったステージに立ち、あれは思い込みなどではない、ミキティはたしかに自分に手を振っていてくれていたということを確信するのである。これぞ、まさに逆転力である。
「アイドルに憧れていた昔の私に、手を振ってあげることができた気がしました」
ピンチをチャンスに変える。むしろ、ピンチを待て、ピンチは逆転するチャンスだと思え。と彼女は言っているが、そう簡単にピンチを受け入れられる人間はいない。わざわざピンチを待つ必要なんてない。ピンチは回避して生きたいと思うのが普通だが、彼女は違うのである。
彼女はポジティブであると同時に、努力家だ。彼女の挨拶の仕方、話を聞く姿勢は私たち素人も参考になるところがある。彼女は好感度を貯蓄すると言っているが、彼女は努力で好感度以外のものも貯蓄している。
HKT48指原莉乃というドルヲタ
彼女はアイドルファンから、アイドルになった。
@AIKOsan_1214 そーよ!
— 指原 莉乃 (@345__chan) 2016年4月13日
しかし、今も変わらずドルヲタである。彼女のドルヲタ目線のツイートは面白い。
AKB48の5期生として加入した彼女は、今や48グループには、なくてはならない存在だ。総選挙で史上初の2冠を達成しただけではなく、HKT48の支配人とアイドル業を兼任する彼女は、きっとプロデュース力のセンスもあるのだろう。
私は、アイドルヲタク兼アイドルの指原莉乃に今後も注目し続ける。